●地検特捜部が「富士通内紛」を事件化させる覚悟と意味!
NO.649   2010.7.15
 富士通が野副州旦元社長を不可解な形で馘首、それを野副氏がマスコミに告発して約5カ月が経過した。
「反社会的勢力との関係を疑われるファンドとの関係を断ち切らなかったから」
 6月末に開かれた株主総会でも会社側の説明は変わらず、「反社」と断定されたサンドリンガムキャピタルパートナーズリミテッド(房広治代表)とその子会社のサンドリンガム・プライベートバリュー(鳥井洋一代表)は、富士通を相手に、3億円の名誉毀損訴訟を起こしている。
 野副氏の怒りが治まらない以上、「内紛」はくすぶり続ける。マスコミのインタビューを受け、手記を書き、東京地検特捜部にも刑事告発を相談、「たった一人の反乱」とはいえ、従業員18万4000人、売上高4兆7000億円の巨大企業のトップにまで上り詰めた人が、「手負いの獅子」となって戦いを挑んでいるのだから、騒動は続く。
 重要なのは、地検特捜部が野副氏の反乱に興味を持ち、野副氏とその周辺の事情聴取を熱心に繰り返していることだ。
 巨大利権や巨大組織の犯罪に切り込む際、内紛の利用は最も効率的である。特捜部には3年前、防衛商社・山田洋行で起こったオーナーと専務の争いに乗じて防衛利権に切り込み、「防衛省のドン」といわれた守屋武昌元防衛事務次官を逮捕した成功体験がある。
 野副氏の狙いは一つ。名誉回復である。昨年9月25日、「病気療養」を名目に社長退任を余儀なくされたが、それは「富士通改革」を矢継ぎ早に進める野副氏を脅威に感じた秋草直之相談役ら“長老”が、「反社とのつきあい」を理由に追い出したのが実情だった。
 あまりに不可解な解任劇が、当人の口から語られることによって、富士通のガバナンスなき経営が明らかとなった。
 富士通の株主や社員、それにこの問題に関心のある人たちは、「反社とのつきあい」という、会社側のとってつけたような解任理由を信じていない。だが、会社はその主張を通すしかない。だから、野副氏は潔白を証明するためにも、特捜部に自分を解任に追い込んだ「富士通の闇」を解明してもらいたい。
 野副氏の告発を受けた特捜部の狙いは、富士通という巨大組織で行き交う不可解なカネの流れの解明である。それを突破口に、巨大組織の「社長をクビにしてまで守りたかった会社の闇」にまで遡りたい。
 内紛の過程で飛び出した資料等によって、富士通経営陣の数々の不可思議な資金移動が明らかとなった。
 例えば、弁護士資格を持つ取締役への月に1000万円もの報酬である。役員報酬とは別に、年間1億2000万円もの報酬が支払われているのはなぜか。それは、“裏ガネ”ではないのか。この役員は野副問題の担当者だっただけに、正規の役員報酬決議に諮ったものとは思えない。
 また、今回、野副氏を籠絡するために、年間2700万円、10年間で2億7000万円もの顧問料名目の口止め料が約束された。これはどんな予算からか。また、富士通には秋草氏や山本卓眞顧問など、多くの顧問、相談役といった肩書の“功労者”がいるが、そうしたOBに支払われるカネは、正規の取り決めによるものなのか。
 あるいは、野副氏を「病気療養」にするために、毎日、病院に通院させ、「慢性疲労症候群」という奇妙な病名をつけたうえで、何カ月も病室で、テレビや読書など意味のない日々を過ごさせた。保険がきくわけでもない高額な個室入院費を払ったのは会社だが、それはどのような名目で支払われたのか。
 代表取締役社長に対して、騙し打ちのような解任劇が仕掛けられ、そこに膨大な予算が投じられ、それを代表取締役が承知していない。野副氏が、投じられた予算とともに刑事告発するのは当然だろう。
 その時、明るみに出るのは、会社を食い物にしている「身分なき老人の罪」ではないか。それは、日本の巨大企業を覆う病理であり、企業秩序も視野に入れる東京地検特捜部にとって、格好のテーマとなる。
 堺徹特捜部長は、「小沢捜査」でミソをつけた特捜部の名誉回復を、経済事件で図りたいという意欲を持っている。それだけに野副氏を情報源とする富士通捜査に、大きな期待をかけているという。





NO.649   2010.7.15

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