小沢一郎バッシングはカネになる。
鳩山由紀夫批判も菅直人批判も発行部数に影響はないが、小沢批判は確実に売れる。それは、小沢一郎という政治家の「力の証明」だが、売れるからといって、延々と小沢バッシングを続ける雑誌ジャーナリズムに、志の低さと終焉するメディアの黄昏を感じることができる。
それでも納得させられる小沢批判はあるのだが、逆になに一つ取り柄のない、読むに堪えない小沢批判も存在する。その筆頭が、『文藝春秋』(8月号)が、巻頭で対談させた「小沢一郎の逆襲はあるか 墓場まで持ってゆく秘密」だろう。政治コラムニストの後藤謙次氏の司会で、野中広務氏と立花隆氏が対談した。
冒頭、後藤氏が2人に投げかけるこの言葉に、“意味のなさ”が集約されている。
「選挙の結果如何にかかわらず、国民の関心は政権与党・民主党の、いや日本政治の『闇将軍』的存在である、民主党前幹事長の小沢一郎氏の動向にあるのではないでしょうか」
国民の関心は、民主党がどんな政治をやるかであって、小沢氏の動向ではない。その設問が間違っているから、十年一日のごとく小沢批判を繰り返す野中氏と立花氏が、古典落語のような「小沢論」を述べる。木俣正剛新編集長のセンスを疑うが、新味を出そうとした野中氏の常識外れの発言は、「80歳を過ぎた老人の世迷言」で済む話ではない。
「小沢さんについて明かすべきことが文書にしてあり、私が死んだら公開してもらうことになっています」
こう“前ふり”したうえで、「死後公開する文書」に入っていない“小沢秘話”として、次の三つを挙げている。
第一に心臓病を患って、ペースメーカーを入れており、治療のためにロンドンに行くというのは誤りであること。では、なぜ行くかといえば、「相当のカジノ好き」であることに答えがあり、「ロンドンには個室のカジノがあり、そこに行っているという話があるのです」という。
第二は、湾岸戦争への拠出金の問題。小沢氏が仕切ったこのカネは、日本では130億ドルといわれているが、実際にアメリカで明らかになっているのは100億ドルだけ。「残りの30億ドルはどこへ行ったか」と、疑問符で締めているものの、文章の流れからして小沢氏を疑っていることは明白だ。
第三は、東京佐川急便から金丸信元自民党副総裁への5億円献金問題。金丸失脚の原因となった献金だが、5億円が金丸氏で、「その秘書の生原さんが3000万円。小沢さんはその中間の3億円くらいはもらっているんじゃないかと思いますよ」と、言い放つ。
いかに引退した政治家とはいえ、個人をここまで誹謗中傷していいはずがない。30億ドル(約3000億円)ものカネを、小沢氏はどうしたというのか。「佐川急便から3億円」の根拠のなさには驚くばかりで、こんな名誉毀損発言を黙って載せてしまう文藝春秋も同罪である。
読後感の悪さは、政治を政局でしか語れない老政治家の貧困に尽きる。語る世界観も人生観もなく、ないから小沢批判に終始、「小沢は悪魔」と繰り返していれば、常にマスコミが注目してくれるという計算もある。
立花氏に至っては、「田中角栄研究」から30年以上の歳月を経て、なおもそこを一歩も越えることができず、「角栄の弟子の小沢一郎」という位置づけから脱却できない。語る言葉がないから、野中発言へのお追従に終始する。共同通信の記者からキャスターに転身、見事にこけた後藤氏も、結局、「政局の政治部記者」でしかないことを、この対談でもさらしてしまった。
機を見るに敏な鈴木宗男氏は、“右腕”の佐藤優氏とともに、早々に野中氏を見限って、小沢氏に付いた。それは「引退」と「現役」の差ではなく、野中氏が政治家としてだけでなく、人間として衰えたことの証明で、「墓場までもってゆく秘密」があると公言する品のなさは、マスコミに登場する政界人の中でも最悪といって差し支えない。

