●相撲の「賭博狩り」の背景にある暴力団掃討作戦の怖さ
NO.648   2010.7.1
 山口組壊滅作戦を展開する警察当局にとって、野球賭博を材料にした「角界捜査」は、国民に対する格好のアピール材料になった。「角界浄化」と、「力士を食い物する暴力団排除」の一石二鳥。これで、琴光喜の背後の胴元が山口組系暴力団なら申し分ないし、なかでも弘道会系なら100点満点である。
 警察庁の安藤隆春長官が、「山口組の原動力である弘道会の徹底取り締まり」を指示したのは、昨年9月である。六代目山口組の司忍組長が、来春、出所を予定しており、それまでに急速に勢力を拡大している司忍組長の出身母体の弘道会を徹底的に追い込む戦略。最終ターゲットは、山口組若頭を務める高山清司弘道会組長。「車庫飛ばしでも風営法でも宅建業法違反でも、『なんでもいいから高山をパクれ!』という指示が、警察庁から出ている」(警視庁関係者)
 実際、山口組直参に対する捜査は苛烈を極めている。
 今年に入ってから、落合勇治・二代目小西一家総長、飯田倫功・倭和会会長、宮下和美・二代目西脇組組長、高山誠賢・淡海一家総長、菱田達之・二代目愛桜会会長、清田健二・十代目瀬戸一家総裁、宮本浩二・四代目北岡会会長が相次いで逮捕された。
 それに加え、6月16日には、北海道警と大阪府警が合同で、宅建業法違反容疑によって、光安克明・光安会会長、江口健治・二代目健心会会長、森尾卯太男・大同会会長を逮捕。所在不明で指名手配されていた寺岡修・山口組若頭補佐(侠友会会長)も逮捕。わずか半年で、若頭補佐という最高幹部を含む11名が摘発された。
 宅建業法違反とは、山口組カンパニーの株式会社山輝で行なわれていた“慣例”の不動産所有権の移転が、無免許事業の禁止に当たるというもの。「何でもあり」の山口組壊滅作戦の証だが、その端緒を北海道警が開き、地元の大阪府警との合同捜査となったところに、警察庁の意気込みがある。
 今回の野球賭博も、大相撲名古屋場所で発覚した砂かぶりでの暴力団観戦の発覚も、すべて掃討作戦の一環といっていい。
 さらに関連付けられて報道されてないが、暴力団の糧道を断つ作業は、4〜5年前から強化され、包囲網は完ぺきに狭まったといっていい。
 まず証券口座。証券界では、06年11月、警察庁、金融庁、東京・大阪証券取引所、日本証券業協会などが「証券保安連絡会」を設置、定期的に情報交換を行なってきたが、そうした捜査監督当局と民間が持つデータベースを共有、暴力団関係者の情報は、各証券会社が瞬時に入手できることになった。
 銀行口座も同様で、08年5月、警察庁、金融庁、預金保険機構、全銀協は「反社会的勢力介入排除対策協議会」を設置、情報を持ち寄って、組員、準構成員、企業舎弟を特定、彼らと関係のある企業を排除した。さらに昨年9月からは、暴力団関係者の銀行口座開設を認めなくなった。
 公共工事も同様で、大阪府などがまず、個別に暴力団周辺企業を公共事業から排除。その動きは全国に広がっているが、さらに福岡県は、今年4月から「暴力団排除条例」を施行、公共工事だけでなく、事務所の賃貸、みかじめ料の徴収など、全ての暴力団絡みの活動を排除することになった。この条例制定も全国に広がる勢いだ。
 証券口座が開けないのはもちろん、銀行口座が開設できないのでは、暴力団関係者は日常生活を営むのにも苦労する。条例で活動を封鎖されればなおさらである。それが本当に暴力団を壊滅、せん滅するのなら、一連の強硬策は認めよう。
 だが、暴力団関係者はこうせせら笑う。
「ばかばかしい。会社の登記地を替え、株主を替え、役員を替えたらそれで済む話だ」
 要はマフィア化するだけ。本当の「暴力団排除」につながらず、地下潜行だからやっかいで、野球賭博のような華々しい打ち上げ花火は結構だが、その先にどんな展望があるのか。マフィア化をどう封じるかの戦略なしに、壊滅作戦を進めても意味はない。





NO.648   2010.7.1

●菅政権批判を高める野党にその資格があるか?

●「東大教授」の看板でテレビ司会者として“時流”に乗る御厨貴氏の罪

●FOIとシニアCの「粉飾上場」を許した東証と主幹事証券の責任!

●高速道路会社首脳人事から財界が受け取った「民主党の鎧」

●ついに主体的に“前”へ出たiPad時代の「新聞」

●相撲の「賭博狩り」の背景にある暴力団掃討作戦の怖さ

●『新検察秘録』(村串栄一)が描く還暦を過ぎた地検特捜部の正念場




NO.647   2010.6.15

●菅内閣がマスメディアとの戦いに勝てるか?

●みんなの党・渡辺喜美代表が引きずる「親子二代金権政治家」の影

●業界が注視する日本振興銀行の「これから」

●ワンマン社長を退任に追い込んだ『道新』新経営陣の手腕は?

●自殺による賃上げが日本経済を牽引するという中国のパワーの凄さ!

●改正貸金業法で追い詰められた武富士とプロミスが逃げ込む事業再生ADR

●『右翼の掟 公安警察の真実』が描く右翼民族派の理想と限界




NO.646   2010.6.1

●福島・社民党の離脱を倒閣運動に利用するメディアのおぞましさ!

●大林新検事総長ほか「法務・検察」の大異動で政界捜査の行方

●大衆に迎合して新幹線建設にまで踏み込む亀井静香金融相の“暴走”を止めよ!

●「岡本倶楽部」で徹底解明すべき暴力団ルート!

●「特定看護師」は医療現場の救世主なのか?

●グッドウィル事件の「冒陳」で明らかになった久間元防衛相と統一教会との関係

●郵便不正公判「調書不採用」の重すぎる衝撃!




NO.645   2010.5.15

●メディア政局にするな!

●検審「小沢氏起訴相当」の危険性

●検察審査会を「組織維持」に使う「法務・検察」の病理!

●脱北者偽装の対南工作頻発——アジアの公安網から見放される日本当局

●中途半端な増資と人事でみずほFGの加速する落日

●ゴールドマンと米政府との和解でまた蔓延する強欲資本主義!

●ビジネスモデルが壊れた「新聞の復活」は弱小産経がリードする?