●八城政基社長が逃げ出す新生銀行の断末魔
NO.640   2010.3.1
 引当金の積み増しなどで、2010年3月期決算が二期連続の赤字となることが確実な新生銀行の八城政基社長が、6月の株主総会で退任する意向を固めている。
 旧日本長期信用銀行が経営破たん、米投資会社のリップルウッドが組成したファンドが旧長銀を買収、その社長に招かれた八城氏は、効率性を追求する「ファンド資本主義」を体現する経営者として、脚光を浴びた。
 実際、新生銀行として再出発してから4年後の04年2月19日、同行は上場、ファンドは保有株の約35%を売り出して約2200億円を獲得したうえに、約4800億円の含み益を手にした。だが、そこから先は伸び悩んだ。
「もともと長銀は店舗数が少ないので、消費者金融業にシフト、レイクのブランドを持つGEコンシューマー・ファイナンスを5800億円で買収した。また、不動産の証券化ビジネスを軸にした業務や海外投融資にも力を入れた。そんな事業戦略がことごとく失敗、それに追い打ちをかけたのがリーマンショックで、新生銀行はビジネスモデルを失ってしまった」(証券アナリスト)
 凋落の一途を辿ったのは前社長のティアリー・ポルテ時代である。一度は退任していた八城氏だったが、「存亡の危機」を筆頭株主のJCフラワーズを率いるフラワーズ氏から訴えられて再登板、08年6月、会長に就任、同年11月社長を兼務した。
 新生銀行に衣替えする過程で、八城氏らは旧長銀時代の法人顧客を切っている。さらに、「2割価値が下がれば政府が買い取る」という悪名高い瑕疵担保条項を活用、ファーストクレジット、第一ホテル、ライフなど多くの企業を倒産に追い込んだ。
 そのうえ新生銀行が上場する際、上場益に日本政府は課税できなかった。ファンドがオランダ法人で日本の課税権が及ばなかったためであり、日本政府は1740億円の国庫納入のチャンスを失った。
 旧長銀破たんの時点で、政府は「相手の無知に付け込んで、できるだけ優位に契約を結ぶ」という、アングロサクソン流の国際金融の発想が理解できていなかった。その脇の甘さをつかれ、「瑕疵担保条項を使った倒産」と「課税なき上場」を認めてしまった。
 政府は旧長銀を8兆円の公的資金を投じて処理、国有化のうえでリップルウッドのファンドに売却したわけだが、過去を清算して再出発、しかも批判をもろともせずに取引先を倒産に追い込みながら、新生銀行は打つ手打つ手が裏目に出た。
 八城氏自ら力を入れた消費者金融部門は、周知のように規制強化と過払金返還請求訴訟の続出で先行きが見通せない状態。法人部門に力を入れるといっても、かつて裏切りの連続であったことを考えれば無理な相談で、投資銀行、不動産、海外投融資の各部門でも成長戦略が描けないとなると、他行との合併か公的資金の再投入しかない。
 しかし2169億円もの公的資金が残っている状態では、金融庁としてもおいそれとは支援できない。そこで八城氏と金融庁幹部が考えたのが、あおぞら銀行との合併だった。09年7月1日、両行は合併に合意したと発表した。金融庁には、両行をメガバンクに属さない地銀の“受け皿”にしようという思惑もあった。
 ところが、新生銀行の惨状に気付いた、あおぞら銀行が合併に尻込み。現在、新生銀行に銀行検査を入れている金融庁も、破談を認めざるを得なかった。となると、単独での生き残りを図るしかないが、その道筋が見えないまま、資産内容は劣化を続けている。
 シビアなファンドは、目先の利益を追い、上場益という果実は得たものの、結局、銀行を再生できなかった。これから待ち受けるのは、見るも無残な倒産劇か。
 唯一の救いは、亀井静香金融相が金融秩序を重んじて、「銀行倒産」という選択肢を許さないことだろう。ただ、新生銀行自体に策はない。八方塞がりの八城氏は、誰に何と言われようと、逃げ出したいのである。





NO.640   2010.3.1

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