日常、スーパーを利用する主婦なら、誰もがイオンの“荒廃”に気が付いている。意見を総合するとこうなる。
全ての商品に共通するのは、品揃えが悪いこと。また、衣料品は品質が悪く、食品は新鮮さに欠ける。なにより売り場に活気がなく、店員にサービス精神がない——。
致命的である。最大の原因は、ビジネスモデルを喪失したことだろう。イオンといえば食品スーパーのイメージだが、実は、郊外に農地を取得、転用して巨大ショッピングセンターを建設、専門店街から賃料を徴収する不動産業、クレジットやキャッシングで稼ぐ金融業、そして本業の小売業の三部門で成り立っている。
この三部門を拡大拡張戦略の中で育て上げたのが岡田元也社長である。創業家の岡田卓也名誉会長の長男で弟は克也外相。その“威光”で、1997年6月、45歳の若さで社長に就任、「ジャスコ(イオンの前身)は岡田家のものじゃない」という批判を跳ね返すように、積極策に出た。
小売業で「世界のトップ10を目指す」と、目標を掲げ、郊外ショッピングセンターを次々にオープンさせる一方で、活発なM&Aを展開、ヤオハン、マイカルを子会社化、ダイエーやマルエツを傘下に入れた。200社近いイオングループは、規模は間違いなくイトーヨーカ堂を抱えるセブン&アイ・ホールディングスに肩を並べる存在となった。
だが、その一方で、需要の低迷がイオンの首を絞める。全国のスーパーの売上高が、岡田氏の社長就任時の97年比で21%も減少する中で、「量の拡大」は有利子負債の重さとなって経営を直撃した。08年末の段階で有利子負債は1兆2400億円に達し、それにリース債務の9400億円を加えると実質債務は2兆1800億円にもなる。
ただでさえスーパーの利益率は低い。その薄い利幅を、金利が吸い上げる構造で、低金利時代だから生き残っているが、金利が上昇すればたちまち赤字に転落、かつてのダイエーと同じ構造である。09年2月期は28億円の最終赤字。09年8月中間連結決算でも146億円の赤字を計上した。
既に、イオングループでは「岡田退陣説」が公然と囁かれている。ただ、「人のいうことを聞かないワンマン」として12年以上もイオングループに君臨してきたプライドの高い岡田氏は、「下り坂」のままイオンを放り出すつもりはない。再建への“道筋”はつけるつもりである。
その第一弾が、北米で1000店舗を展開する婦人服専門店のタルボットの売却だった。アメリカの消費市場がリーマンショックを機に低迷、タルボットの収益も大幅に落ち込んで、売却も当然と思われるのだが、実は、傘下有力企業の売却は、拡大拡張戦略を走ってきた岡田社長が初めて下す決断で、路線転換を意味した。
昨年末、マスコミ各社のインタビューに応じた岡田社長は、「衣食住が揃う総合スーパーにこだわらない」と、「脱スーパー宣言」をした。そのうえで、海外ではタルボットに代表される北米市場から撤退、中国やアジアでの事業展開をぶち上げた。
海外では「アジアのイオン」を目指し、国内的には総合スーパーを脱して、幅広く専門店展開する。縮小均衡型の路線転換だが、具体像が見えないところが厳しく、「拡大戦略で売った人が縮小戦略の指揮を執るのは矛盾。早く責任を取って退任すべき」といった声が、業界の内外から聞こえてくる。
メインのみずほコーポレート銀行が、大型増資に出遅れて焦りをつのらせ、巨額負債企業のイオンに距離を置こうとする中での路線転換というのも不安材料だが、メインの“穴”を埋めるように、筆頭株主の三菱商事を核とする三菱グループが、イオンを支える構えを見せており、最終的には岡田社長が退任、三菱グループのもとでの再生が、現実味を帯びてきている。

