●「小沢捜査」の検察側敗北を認めないマスコミの責任!
NO.639   2010.2.15
 東京地検特捜部が、小沢一郎民主党代表(当時)の大久保隆規秘書を電撃逮捕してから約1年が経過、執念の捜査で小沢氏本人を狙ったものの叶わず、大久保秘書に石川知裕(現代議士)、池田光智の両元秘書を加えた3人を起訴して捜査は終結した。
 この間、嵩にかかって小沢氏を攻め立てたマスコミは、振り上げた拳をおろせない。だから「検察審査会がある」と、「小沢捜査」の継続を示唆する。確かに検察審査会法が改正され、小沢氏のように「不起訴処分」となっても、「起訴相当」が二度、議決されると強制的に起訴されることになった。
 しかし、それがいかに現実的でないかは、弊誌別項の「明石歩道橋事故」の事例が示す。11人が死亡したこの事故で、業務上過失致死容疑で書類送検された明石警察署の副署長の不起訴処分がひっくり返り、起訴されることになったが、8年2カ月に及ぶ捜査期間に集められた証拠や関係者の供述調書の量は膨大で、「指定弁護士の職務執行にはさまざま困難が予想される」と、兵庫県弁護士会が今から嘆息しているほどだ。
 後述するように「ヤメ検」にはさまざまな道義的責任が潜むが、有力ヤメ検の石川達紘氏が、「これだけやって立件できないなら、再度、体制を立て直して捜査しても無駄。検察は負けた」という趣旨のコメントを、マスコミ対して行なっているのは正しい。「負け」は素直に認めるべきである。
 では、なぜ敗れたのか。ローテンション人事で「捜査のプロ」を育てなくなったことに加え、検察の「シナリオ捜査」に限界が生じているからだ。
 特捜検察は、事件が発生してから動くわけではない。マスコミからの情報提供、国税や証券取引等監視委員会などからの告発を受けて、「日本の秩序」を害すると思われるような案件をピックアップ、「一罰百戒」を狙って捜査着手する。東京地検特捜部の検事数は、副部長以上の管理職も含めて40名弱。勢い、効率的で効果的な事件を選択することになるが、「バッチ(政治家)を狙う」というのは、特捜検事の“本能”といっていい。
 そういう意味で、西松建設の「裏ガネ問題」に小沢氏が登場、「田中角栄流」を実践する利権政治家で、しかも検察改革をもくろむ“危険”な政治家であったために、特捜部が小沢氏をターゲットにしたのは当然の成り行きだった。ただ、最初の「大久保事件」の段階では小沢氏まで延ばすつもりのなかった特捜部が、「小沢排除」に燃えるのは、検事総長の国会同意人事など、「検察の秩序」に小沢氏周辺が刃向かってきたからだ。
 「大久保事件」が「石川事件」となって発展するのは、市民団体から石川氏ら3人の告発が出た昨年11月の時点からだが、その時点で特捜部は、次のようなストーリーを描いたのだった。
 「陸山会」の会計担当だった石川秘書を落とし、収支報告書への虚偽記載については、「小沢先生に報告、了承を得た」という供述を取って、最低限、小沢氏を在宅起訴できる環境を整え、2月4日の3秘書の起訴に合わせて小沢氏の私宅などを家宅捜査、脱税事件での捜査につなげる——。
 しかし、政界最高実力者を刑事処分するに当たり、政治権力との対決を避けたい最高検など上級官庁が、「了承だけでは弱い。供述を了承から『指示を受けた』にワンランク上げなければならない」と、ハードルを一段高くし、さすがに「指示」が、小沢氏の事件への関与を証明することは石川秘書にもわかるため、それだけは決して認めなかった。それが小沢氏に辿り着けなかった理由である。
 結局、特捜部には小沢氏を追い込む材料がなく、「起訴ありき」のシナリオ捜査を進めていたに過ぎない。「反民主」「反小沢」の感情で捜査をスタートさせたことを考えれば、特捜部の“暴走”で国会が機能をストップ、「検察政局」にしてしまった罪は大きい。経済不況に日本があえいでいる時に、「小沢捜査」で国政の停滞を招いてはならなかった。
 それは「検察の失敗」ではあるが、それを容認、昔ながらの検察と一体となった報道を繰り返したマスコミの罪は大きい。誰もが検察リークによって「捜査の流れ」が形成されていることを知っているのに、司法記者のエース級が、「検察捜査にリークなど存在しない」と、自己弁護に終始した。
 コメンテーターとして登場する毎日・岸井成格、読売・橋本五郎、朝日・星浩、TBS(元共同)・後藤謙次といった大物政治記者が、事件については検察の立場に立つために、「検察の判断」のカベを乗り越えることができず、それがゆえにコメントは一律に平板、独自性も面白みもなかった。
 ヤメ検も同様に、元特捜部長の肩書で多くのOBが登場したものの、冴えを見せたのは石川達紘弁護士ぐらいで、他はそれが「了解事項」なのか、揃って特捜捜査を擁護、みんな「小沢起訴、場合によっては逮捕」と、語って恥をかいた。中でも宗像紀夫弁護士の活躍が目立ったが、宗像氏のいう「隠し玉」はなかったし、宗像氏自身、現役時代にパチンコ業者とのベトナム旅行などのスキャンダルがあり、小沢氏の“違法”を「したり顔」で攻めても説得力を欠いた。
 結局、マスコミは検察に対し、「運命共同体」という意識を持ち、それが報道を歪め、検察を唯我独尊の組織にした。その反省なしに、「小沢捜査」を語ってはなるまい。





NO.639   2010.2.15

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●「小沢捜査」の検察側敗北を認めないマスコミの責任!

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NO.638   2010.2.1

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NO.637   2010.1.1.15

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NO.636   2009.12.15

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