年末年始に、新聞の社会面、テレビの報道番組を騒がせたのは、鳩山由紀夫、小沢一郎の政治資金規正法事件だった。
捜査するのは「最強の捜査機関」である東京地検特捜部、狙われているのが現首相と政界の最大実力者なのだから、ニュース性は確かにある。
だが、そもそも連日、報道するに値するほどたいへんな事件なのか。国民が怒り、検察がその思いを代弁しなければならないほどの事件なのか。
周知のように「鳩山事件」は、鳩山首相の元秘書の勝場啓二氏が、鳩山首相自身のカネや母・安子さんから受け取ったカネを「友愛政経懇話会」の政治資金収支報告書にキチンと記載しなかったという事件であり、「小沢事件」は、「陸山会」の会計担当である石川知裕秘書(現代議士)が、世田谷区深沢の秘書宅敷地を購入するにあたり、4億円を小沢一郎氏から借り入れながら、それを「陸山会」の政治資金収支報告書に記載していなかったという事件である。
ロッキード事件、リクルート事件、金丸信脱税事件などと比べ、国民の関心事はすこぶる薄く、街頭インタビューなどでも本気で怒っている人はいない。
当然だろう。鳩山首相の資金が鳩山家のものであるのは、清廉で知られた故・藤山愛一郎元外相と同じ「政治家としての覚悟」を示しており、批判されるいわれはない。唯一、相続税逃れはその通りだが、指摘されて鳩山首相は自ら修正、納税する。
一方、小沢氏にしても、報告されていない「4億円の出所」が問われているものの、30有余年政治家を続け、それも最大級の実力者である小沢氏に4億円ぐらいの「手元のカネがあっても当然だろう」と、一般の国民は認識している。
むろん、それが報道されているように、小沢事務所が「天の声」を発したという胆沢ダムに関するゼネコンからの「裏献金」というのなら話は別だが、「現金で1億円を手渡した」という水谷功水谷建設元会長の証言が事実だとしても、そのカネを「深沢の秘書宅」に結びつけるには無理がある。
本来、特捜検察は、警察が手をつけられない政官財の癒着や腐敗を摘発、「国民の素朴な正義感」に応えることを自らの責務と考えてきた。また、マスコミは「第四の権力」と言われながらも、捜査権を与えられているわけではなく、検察と一体となって「巨悪」に立ち向かうことを使命としてきた。
この特捜検察とマスコミが、両輪となって権力者に「一罰百戒」を下す姿を国民は認め、喝采を贈ってきたのに、今度ばかりは、しらけている。それは、鳩山・小沢に立ち向かう動機が、自分たちの既得権益のためであることが読めてしまうからだろう。あるいはそのことに、「直感」で気付いている。
政権交代で民主党が手がけているのは、第一に対米従属路線の見直しであり、第二に官僚支配からの脱却である。
どちらも既得権益を持った官僚社会と記者クラブ制度に安住するマスコミは、依って立つ基盤を揺るがされるもので、簡単には容認できないし、“破壊者”の民主党前現代表には一矢報いないではいられない。それが地検特捜部の政治資金規正法違反での捜査となったし、マスコミの異常と言ってもいい反民主・反鳩山・反小沢報道となった。
しかし、特捜部は本気のケンカを仕掛けたものの、いい材料が出てこなかった。「鳩山捜査」では勝場元秘書を在宅起訴、芳賀大輔秘書を略式起訴して終結した。大詰めを迎えている「小沢捜査」では、小沢氏を参考人聴取のうえで、石川代議士と大久保隆規秘書を在宅起訴する。
胆沢ダムに絡み、特捜部が隠し玉で捜査を継続、さらに大きく展開する可能性は残されているものの、事件が大きくまとまったか、小さくまとまったかは問題ではない。
今後、問われるのは、「法務・検察」の、例えば検事総長人事を「国会同意事項」にしてしまいかねない小沢氏を牽制するために、「検察庁益」の捜査をしてしまった検察庁と、過去のしがらみを引きずって反小沢報道に走ったマスコミの責任である。
今年8月4日の誕生日までに退任する樋渡利秋検事総長は、早く小沢氏との戦いから身を引きたがっており、「お前に任せた!」と、次期総長を確実視される大林宏東京高検検事長に投げ、小沢氏を恐れる大林氏は、最終決着を先延ばしにしてきたという。
この程度の組織が、ここ数カ月、国政を揺るがせてきた。その責任を検察もマスコミも取らない。これほどの無責任はなく、まさに小沢氏は、その手で「法務・検察」とその腰巾着のマスコミを、“粛清”した方がいい。

