みずほフィナンシャルグループ(FG)がおかしい。そのおかしさを、弊誌はNo.584とNo.585で報じた。
「特捜案件」となる可能性が高い、グッドウィル・グループによるクリスタルの買収。二つのファンドを利用した怪しさ、クリスタルオーナーの株式売却価格の低さ、インサイダー取引を思わせる株価の変動など、捜査当局が関心をもってしかるべき問題を抱えた買収劇だったが、買収資金の883億円を、みずほ銀行が単独で用意、グッドウィルに提供したのは謎の一つである。
また、TBS株の買収資金265億円を靴小売チェーンのABCマートに融資したことも、おかしな話である。楽天のTBS株買い占めの際、調停に乗り出したのは、みずほコーポレート銀行(CB)の斎藤宏頭取だった。同じグループでも銀行が別で案件が別、ということかも知れないが、TBSの顔に泥を塗るような融資であり、TBS幹部は当然のことながら怒り心頭に発していた。実際、ABCマートの三木正浩前会長は、株を売り抜けて終了。みずほ銀行はTBSを揺さぶるマネーゲームのために資金を融資しただけだった。
しかも、この融資を担当した渋谷支店長は、「証券市場をいたずらに混乱させるだけのスキーム」といわれた、上場3社を巻き込む大黒屋の買収劇にも資金を提供していた。
米ゴールドマン・サックス出身の小川浩平森電機社長は、森電機、サクラダ、ディーワンダーランドといった業績不振の三つの上場企業が、業績好調な中古ブランドの質屋である大黒屋を抱き込むことで株価を上げ、売却益で利益を確保しようという、ムシのいいスキームを考案したが、市場の反発をくらってうまくいかなかった。
その収益至上主義には、コンプライアンス上の問題があるのではないかとして、金融庁は11月から、みずほFGの銀行検査に入っており、弊誌が指摘した上記案件の関係者に、しつこく事情を聞いているという。
さらに金融庁が問題としているものに、下期に1000億円の追加損失が生じ、トータルで1350億円もの巨額損失(2008年3月期)となった、みずほ証券のサブプライムローン問題がある。欧米金融機関の損失に比べると少ないとはいえ、国内銀行では最高額。当局から指摘されるまでもなく、経営責任を問い、体制を見直すのが筋だが、みずほFGは誰の責任も問わなかった。
前田晃伸社長は、11月14日の決算会見で、「彼(横尾敬介みずほ証券社長)が何かして市場を壊したわけではない」と述べ、横尾社長の続投を明らかにしたが、「時代のせい」「政府のせい」「米国のせい」が通るのなら、社長は要らない。金融関係者は共通して、横尾社長の責任を追及することで、親会社の斎藤みずほCB頭取の責任問題に波及するのを恐れたのではないか、と推測する。
つまり、旧富士銀出身の前田みずほFG社長が、旧興銀出身の斎藤みずほCB頭取とのガチンコ勝負となるのを避けた。そんな人事抗争が未だに続いているうえ、勝負したくない理由の一つに、今年、前田社長が日本経団連副会長に就任したことが挙げられている。
いまだに税金を払っていない銀行の代表が経団連副会長かと、批判も受けたが、臆面もなく前田氏は受けた。副会長の任期は2期4年。それまで長期政権が続くことが確実である以上、斎藤氏との争いはひとまずお預け、ということだろうか。こんな「事なかれ主義」では、コンプライアンスがガタつき、収益至上主義がはびこるのも無理はない。

