経営危機が表面化していた「駅前留学」のNOVAが10月26日、会社更生法の適用を申請して倒産、大阪地裁から保全管理人に選任された東畠敏明、高橋典明の両弁護士による支援企業探しが始まっている。
破綻の原因は、創業者である猿橋望前社長(56歳)のワンマン経営に尽きよう。NOVAの経営危機は今年に入って表面化、4月、最高裁がNOVAの中途解約を巡る清算方法を違法とする判決を下したことで、解約が殺到して経営に深刻なダメージを与え、6月、経済産業省が業務の一部停止命令を出したことで決定的となった。
ワンマン経営の強みは、強いリーダーシップのもとでの即断即決にある。早い意思決定と明確な目標は、企業が上り調子にある時は勢いを加速させる。だが、反転を始めた時にはもろい。縮小均衡といった後ろ向きの発想に馴染めず、他の経営陣や銀行などの助言に耳を傾けず、「イケイケ路線」を続けて墓穴を掘り、傷口を広げてしまう。要は、退脚の時期を逸してしまうのだ。
猿橋氏の場合、企業再生のラストチャンスが丸井との資本・業務提携だった。今年5月下旬には、丸井の66億円の増資引き受けと経営支援によって、再建のメドが一度は立ったという。だが、猿橋氏は行き先を知らせずに“失踪”、あきれた丸井は協議を打ち切った。丸井傘下に入る決断がつかなかったのだろうが、その常識のなさは異常である。
あげく、猿橋氏が頼ったのは「資本のハイエナ」である。
弊誌は前号(No.586)で、旧南野建設(現・A・Cホールディングス)の増資に絡んで株価を操縦したとして、「最後の大物仕手筋」と呼ばれる西田晴夫氏が逮捕寸前であると報じたが、その直後の10月12日、大阪地検特捜部が逮捕、西田氏は容疑者となった。「西田逮捕」は、数多くの「西田銘柄」に絡んだ投資家や証券関係者の心胆を寒からしめたが、「最後の西田銘柄」がNOVAであったことは、同じ号で記した通りである。
NOVAは新株予約権計400個(1個あたり50万株)を、10月24日、英領バージン諸島の「タッチ・ペニンシュラ・トレーディング・リミテッド」と「タワー・スカイ・プロフィッツ・リミテッド」に割り当てており、両ファンドとも西田グループが使用する「ハコ」だった。
実際、両ファンドは一昨年の夏から秋にかけて仕手戦を演じたイチヤ(ジャスダック)で使用されており、この時、中心となったのは英ロンドン在住で西田容疑者と親しい白杉恵子氏。逮捕直前、西田容疑者が渡英しようとしたのは、白杉氏との打ち合わせのためだったというが、NOVAの保全管財人はこの不明朗増資に着目、「手続きに問題があれば、民事、刑事の両面で法的措置を取ることも検討したい」と、話している。
ワンマン経営の過程で、猿橋氏は自分の関連する財団に取引を装って1億円を利益提供しており、特別背任なども想定されるが、検察が西田容疑者という重要人物の身柄を拘束しているだけに、「資本のハイエナ掃討作戦」が継続、NOVAに波及する可能性がある。
警察庁関係者が解説する。
「業績不振企業に乗り込んで、無益な資本調達を繰り返す連中は、丸石自転車、大盛工業、アドテックス、そして西田逮捕につながった南野建設と、かなりの範囲で摘発できたと思う。ただ、彼らの背後にいて、大口の資金を投入したり、証券担保金融に応じて巨額の利益を得る金融業者は手つかずだ。株価操縦には関与していないので摘発が難しい。だが、彼らの大半は暴力団系金融業者で、暴力団の有力な資金源になっている。だから西田逮捕の次は、そちらに切り込むつもりだ」
証明するように、NOVAの新株予約権7000万円の引き受けは、暴力団の威圧を背景にする金融業者で、格闘技界や芸能界のタニマチとしても知られるNだった。一連の仕掛けは、西田グループのHが西田容疑者と連絡を取りながら担い、Nの協力のもと、ロンドンから資金を引っ張るという計画だった。
猿橋氏は、丸井との交渉を“破棄”してからは、こうした連中にどっぷりとはまり、8月に発行した7億5000万円の社債も、引受先のコンサルタント会社に、担保として自分の保有する自社株を入れている。
まさに断末魔の資金調達。独身の猿橋氏としては、“我が子”同然のNOVAを救いたい一心だったのだろうが、頼った先が違法の株価操縦を前提とする集団では、事件化もやむを得ない。しかも西田容疑者もNも捜査当局が究極のターゲットとしていた相手である。猿橋氏は「会社への犯罪」とともに、「市場への犯罪」も問われることになりそうだ。

