弊誌はNo.577で、ジャスダックに上場するディーワンダーランド(ディー社)というシステム開発会社が行なった、「不適切な合併」について報じた。
売上高2億1000万円のディー社が買収したのは、中古ブランド品の買い取りと販売を中心とする、質屋チェーンの大黒屋。同社は売上高91億8500万円(2006年3月期)、経常利益16億8500万円(同)と、堂々の規模。当然、「小」が「大」を呑むM&Aは「裏口上場」を疑われ、ジャスダックは昨年3月の発表の直後、「不適切な合併」と見做して、ディー社を3年間の「上場廃止猶予期間」に入れた。
複雑怪奇な資金の流れについては重複を避けるが、ここに登場するのは3社の上場企業である。ディー社と森電機(東証二部)と橋梁メーカーのサクラダ(東証一部)。
ディー社が大黒屋を買収する資金は、みずほ銀行渋谷支店が用意、資金は大黒屋→大黒屋オーナー一族+サクラダファンド→ディー社→大黒屋とグルリと一周した印象で、さして有効なM&Aとはいえない。事実、証券市場も上場3社が「質屋グループ」を取り込んだだけと見て反応せず、逆に新興市場の弱い地合いに引きずられて、ディー社の株価は買収前の半値以下で低迷している。
この不可解なM&Aが、なぜ、誰の意図のもとで行なわれたかは判然とせず、複雑なスキームだけが「怪しげなM&Aの代表」として批判的に報じられていたが、このディー社の内実が判明した。解説するのは、すべてを知る証券関係者である。
「スキームを組んだのは森電機の小川浩平社長。ゴールドマンサックス出身の小川社長は、ファンドを利用した資金調達が得意な証券マンだが、実業に興味がなく手腕もない。まともな金融機関は相手にしない。ところが今回、みずほ銀行が積極的に関与したのは、小川社長と慶応大学の同級生、しかも同ゼミで仲のいい横山之雄渋谷支店長が乗ったからだ。それは、手数料稼ぎと同時に、メーンバンクを務めるサクラダの“救済”につながればいいという思惑もあった」
大黒屋は、当初、上場を狙っていたという。ただ、業績は良くとも、「質屋」という業態では上場に時間がかかる。その時、同社のコンサルタントを務めていた“みずほ銀行”が、ディー社買収による「変則上場」というプランを持ってきた。小川社長と横山支店長は最初からセットだった。
大黒屋にとっては「バラ色のプラン」だった。ディー社の増資をサクラダが35億円、大黒屋オーナー一族が20億円を引き受けるので、約20%の株式を持つ大株主として、これまで通り事業に関与できる。
しかも買収資金は165億円だが、増資資金を除く110億円は、みずほ銀行渋谷支店がノンリコースローンを組むから、買収受け皿の大黒屋ホールディングスは難なく資金を調達、ふところを痛めることなく、売却益と余剰資金(ノンリコースローン)を得ることができた。
さらに、小川社長の説明では、「大黒屋という健全な実業がくっついたことで、ディー社の株価は急騰、相当なキャピタルゲインも得られる」ということだった。
しかし、オーナーにすれば「すべて裏目に出た」ということのようだ。買収発表の直後に「上場猶予」というクレームをつけられ、株価は上がらず逆に含み損を抱え、ノンリコースとはいえローンを抱え返済しなければならない。オーナーの地位を捨てた見返りがあまりに少なく、「小川、横山コンビにはめられた」と、怒り心頭に発しているという。
もちろん、思惑外れは自己責任。ただ、まともな企業は大黒屋だけで、サクラダ、森電機、ディー社の上場3社の赤字体質を、大黒屋の信用と業績で乗り切ろうというスキームだから、これを提案した、みずほ銀行・森電機は無責任過ぎる。
横山支店長といえば、ABCマート傘下のイーエム・プランニングに265億円を融資、TBS株買収を支援したことでも知られる。金利は調達金利に0.1%を乗せただけという不可解なもので、しかも融資分を売却して、みずほ銀行に返済した三木正浩会長は、先ごろ53歳の若さで会長退任を表明した。
横山支店長の周辺で何が起きているのか──当分、目が離せない。

