●吉本興業問題の本質と報じないテレビ局の責任
NO.576   2007.5.15
 『週刊新潮』と『週刊現代』が、がっぷり四つになってケンカ、そこに他の週刊誌が野次馬的に加わって大騒ぎとなった吉本興業問題は、書き尽くされたのか、5月に入るとようやく沈静化の兆しが見え始めた。
 それを待っていたかのように吉本興業は、「株主並びにファンの皆様へ」というニュースリリースをホームページに掲載した。
 まず「多大な心配をおかけした」と詫びたうえで、「報道は事実無根」と断言、次のように徹底解明を誓っている。
「(指摘されるような不正や不明朗なつきあいがあるのなら)事案に応じては、公平な第三者に委託して、真実を解明し、場合に応じ、刑事事件については司直の手に委ね、民事については損害賠償請求など法的な措置を講じ、ファンの皆様の期待に沿うとともに、株主利益の保護に努める所存です」
 契約書よりは人と人との賃借信頼関係を重んじるという前近代的な馴れ合い経営が、今回の騒動につながったことは疑いない。ケンカの主体は創業家当主の林マサ夫人と、特別顧問職に就いていた中田カウス氏。双方、暴力団勢力との関係を持ち出していたが、そうした危ういつきあいは、馴れ合いの中から生まれる。
 「刑事は司直」「民事は損害賠償請求」という言葉は、興行という特殊性を持つ世界で生息してきたがゆえに暴力団とも馴れ合った体質を、脱却するという宣言のようにも思える。それが直ぐに可能かどうかは別にして——。
 ただ、この宣言は、吉本興業が1949年に大阪証券取引所に上場、1961年には東京証券取引所にも上場し、世に認知された証の東証一部上場企業となっていることを考えれば、いかにも遅い。国民的知名度は抜群で、資本金48億円、売上高が430億円に達する企業が、騒動を機にようやくコンプライアンスに目覚めた印象なのだ。
 NHK大阪放送局が制作、放送している「バラエティー生活笑百科」で、準レギュラーの中田氏が出演していたゴールデンウィーク出演分を、NHKの自己判断で延期するなど、騒動が完全に鎮静化したわけではないが、終息へ向かっていることは間違いない。
 だが、今回の問題を一過性で終わらせてはなるまい。『週刊新潮』が林マサ夫人、『週刊現代』が中田カウス氏を擁護したのは、“ネタ元”を大事にしようという判断だけで、「バックに暴力団」という環境は同じである。
 もちろんマサ夫人の場合は、本人ではなく夫の故・裕章氏と暴力団との付き合いになるのだが、同氏は「西」のみならず、「東」でもそれなりの付き合いがあったという。
 吉本興業は、1958年には人気絶頂のプロレスを関西で興行したこともある。その創業家が、神戸芸能社を設立、芸能界に隠然たる力を持った山口組三代目を始めとする興行界の実力者と無縁でいられるわけがない。
 そういう意味で、上場企業が持つべき透明化を、暴力団との関係においてこれまで果たさなかった吉本興業が、しがらみを本当に断ち切れるかどうかの瀬戸際にきている。
 同時に、吉本興業問題はテレビ局の問題にもつながる。溝口敦氏が指摘した「細木数子と暴力団」との関係を、マスコミ関係者は誰でも知っているのに、視聴率稼ぎのために見て見ぬふりをしている。
 暴力団との関係を指摘される芸能人は中田氏だけではないが、テレビ局がそこにチェックを入れたという話は聞かない。そこには、テレビ局と芸能プロダクションと暴力団が同じサークルの中にいるという現実があり、だから判断を停止、週刊誌があれだけ騒いでもまったく報じない。
 それは、「吉本抜きには番組を編成できない」という、吉本芸人に依存した番組を作っているテレビ局の情けない現実でもあるが、同時にテレビ局には、それを報道番組ですら取り上げないというジャーナリズムにあるまじき怯懦がある。そうした本質的問題がある以上、吉本興業問題を、一過性の内紛にしてはならないのである。





NO.576   2007.5.15

●表と裏で改憲を目指す安倍流の危うさ

●市長の首を容易にすげ替えるスズキ会長「支配」の異様さ

●安倍首相主導で決着だが「ザル法」?

●特捜検事が熊本入りした「林道談合事件」の行方

●吉本興業問題の本質と報じないテレビ局の責任

●「公費懸賞金」が招く日本の刑事警察「終わりの始まり」

●「市場のハイエナ」のルーツに入った国税のメス

●大宅賞作家・佐藤優氏の「異能」を生かし切れない雑誌ジャーナリズム




NO.575   2007.5.1

●安倍総理の姿勢に保守派が苛立ち!!

●官僚の「事務局長争奪戦」が暗示する日本版NSCの将来

●安倍首相が激怒した『週刊朝日』報道の真贋

●安倍首相、参院選挙前の改造示唆か?

●暴走する楽天・三木谷とTBSとのケンカが想起させるフジVSライブドア

●「中坊公平が弁護士復帰請求」で問われる弁護士会の見識

●「スポンサー責任」の明確化で揺らぐ広告業界

●三角合併の解禁を前に増える怪しきMBO




NO.574   2007.4.15

●安倍政権の強気姿勢はそのまま持続か?

●「大勝」で傲慢が戻った石原都知事の「2年後引退説」を追う

●最高裁判事という「殿様商売」

●古賀誠氏の反安倍は本物か?

●最高裁で「精算の違法」が確定した英会話のノヴァに迫る危機

●「林道談合」告発の先にちらつく松岡農水相の姿

●防衛の山田洋行でトラブル続出の背景

●田原総一朗氏と山内昌之教授の「テレビと政治論争」の勝者




NO.573   2007.4.1

●命がけの参院選対策だが、その前に党崩壊か?

●松岡農水相よりも怖い菅総務相の強権テレビ局支配

●またぞろ流れる「池田大作健康不安説」と“呼応”する公明の「自民離れ」

●焦る中川幹事長“番記者”に罵声!

●「不二家の改革」への関与で問われる兼元前内閣情報官の見識

●規制強化が追い詰める「サラ金」と「パチンコ」

●加ト吉がかけられた粉飾決算の疑惑

●なぜ警察官は死んだのか──「賞賛」一色で思考停止の「殉職」報道