「明らかなバブル。ウチみたいな中小企業にも見積もりが殺到、それが全部、発注となったらフル稼働して5年、仕事が途切れないほどの量だ。電力とまったく関係のない利権狙いのような業者も多く、修正なしにスタートしたらトラブル続出は必至だね」
太陽光発電システムの設置業者は、ブームの到来を喜びつつも、こう警鐘を鳴らす。
原因は明らかだ。
経済産業省の「調達価格等算定委員会」が、4月25日、太陽光発電の強制的な買い取り価格を、1kWh当たり42円とする委員長案をまとめたことで、「これなら商売になる」と、進出に意欲を見せる業者が、事業化へ向けていっせいに動き始めたのである。
世界の大勢は、太陽光発電の黄昏である。
米国の太陽光発電ベンチャー「ソリンドル」は、オバマ政権が発足と同時にぶち上げた「グリーンニューディール政策」の象徴とされたが、昨年9月に経営破たん。「脱原発」を掲げ、再生エネルギー普及の急先鋒のドイツでも、今年4月、世界有数のメーカー「Qセルズ」が倒産した。
欧米を覆う不況は、金融不安で加速、全量買い取り制度も高値買い取り価格も維持できなくなった。しかも中国メーカーが国策として安値攻勢をかけ、その攻勢は止まらず、採算割れを阻止できなかった。
中国の太陽パネルメーカーの勢いは凄まじい。太陽電池の生産ランキングを見ると、1位がサンテックパワー、2位がJAソーラー、4位にトリナーソーラー、6位にインター・グリーンエナジーと中国勢が続き、太陽電池市場を席巻している。
当初、太陽光発電で日本はトップを突っ走っていた。ところが、補助金をやめて「原子力をCO2削減」の切り札にしたところ、ドイツ、スペイン、イタリアなどに追い越された。ところが福島第一原発事故が発生。「全量買い取り制度」を導入、欧州勢に並ぼうとしたら、今度は欧州勢が不況で息切れしてきた。
太陽光発電は、それだけ補助金頼みなのだが、いくら普及に弾みをつけるとはいえ、「42円は高過ぎる」と言われている。
弊誌は№688で、藤沢数希氏の『「反原発」の不都合な真実』を取り上げ、その冷静な分析に基づく「反原発批判」を紹介したことがあるが、その藤沢氏が「42円、20年保証」について自身のブログで、「筆者は、これは極めて異常な事態で、今後、日本に大きな禍根を残す」と批判している。
藤沢氏は太陽光パネルの価格が、1年で半値となるなど発電コストは下落を続けているのに、ドイツなどの25円から30円程度の買い取り価格よりはるかに高いことへの異議を唱えたうえで、「地域独占で競争原理がないから電力価格が高止まりしている」と電力会社を批判してきた再生エネルギー推進派が、世界水準以上の価格で20年も買い取らせるというご都合主義に冷水を浴びせる。
実際、5月下旬、この条件で正式に決まり、7月から制度がスタートすれば、異業種参入組も含め、業者は儲かる。
「大方の予想では、高くても30円台半ばと観測されていました。それでも高めだけど、資材その他が下落しているので、10年から15年でペイすると思われていた。ところが42円なら、儲けを出すのに7年もかからない」(再生エネルギーの事情通)
また、採算性が合う規模は、産業用で1メガワット(1000キロワット)からと言われており、4000坪を確保、数億円の設置費用を用意できるところなら、誰でも参加できるとあって、不動産、農業、パチンコ・パチスロ、スーパーといった、「郊外で敷地確保型ビジネス」を展開しているところが関心を示している。
誰でも簡単にできるビジネスモデル――。
彼らが稼げるのは、国民の電気料金にそのまま転嫁されるからで、結果的に国民は新規参入の有象無象を食わせることになる。それが、望ましい姿でないのは明らかで、いい加減な業者を排除するためにも、業者の切磋琢磨を生む現実的でシビアな価格を再考すべきではないだろうか。

