芸能界の新年早々の“サプライズ”は、1月4日、吉本興業の大崎洋社長が、「吉本興業・創業100周年プロジェクト」の記者会見で発したこの言葉だった。
「願わくは、社会の皆様、ファンの皆様、マスコミの皆様のご理解を得て、いつの日か、私たち吉本興業に戻ってきてもらえるのだと信じております」
戻って欲しいのは、島田紳助である。
周知のように紳助は、昨年8月、ボクシング元世界チャンプの渡辺二郎を介した山口組系極心連合会会長との交際が発覚、自ら芸能界を退いた。
その記憶が新しいのに、もう芸能界復帰を、「首切り」した当人であるプロダクション社長が要望。その裏には何があったのか。
「昔気質の大崎さんには、紳助を暴力団に走らせた右翼攻撃を会社が防がなかったことへの“負い目”がある。心配していた暴力団排除条例の“締め付け”も緩やかになり、なんとか自分の力で早く復帰させたくなった。また、社長がそう口にすることで、吉本の若手芸人も情報発信しやすく、それが復帰のムード作りになるという計算もあった」(吉本興業関係者)
実際、タブーが解かれたように芸人らが「紳助復帰」を口にし始めた。
「THE MANZAI2011」で優勝したパンクブーブーが、「できることなら復帰していただきたい」と言い、中堅芸人の板尾創路が「また一緒に仕事がしたい」と、強くアピールした。
紳助に人望があるとは聞いたことがない。むしろ、「俺のケツ持ちが誰か知っとんのか!」と、極心連合会の名を出して脅していたというエピソードが物語るように、チンピラ気質。しかも下には強く、上には弱いという世渡り上手で、紳助を嫌う芸人は少なくない。なのに芸人が「待望論」をぶつのは、一部の紳助ファミリー以外は、“社長の意向”を感じ取っているからだ。
もちろん、世間の感じ方とは大きなギャップがある。芸能界専用の情報サイトが復帰に関するアンケートを取ったところ、「賛成」が25%に対し「反対」が75%だった。
「引退会見」は独演会で、「暴力団と一緒の写真があれば見せて欲しい、ハラを切ります」「一緒に仕事したことなんかない」と言い、“浅いつきあい”を強調した。
しかし、その後の嵐のような紳助報道の中で、数々の親密交際証言が飛び出し、写真についても山口組最高幹部と仲良くワインを飲んでいるものが流出、およそ復帰が認められる状況にない。
だが、大崎社長はしたたかだ。年内の早期復帰を目論んでいるわけではないという。
「半年から1年かけて、復帰の環境を整えようということ。最初は吉本の芸人、やがて紳助と親しい和田アキ子のような大物が復帰を口にするようになれば、年末か来年早々には、吉本抜きに番組が成立しないテレビ局のプロデューサーが特番での復帰を準備してくれるハズ、という計算です」(前出の関係者)
もちろんそこには、警察当局の風向きの変化もある。
陣頭指揮を好んだ安藤隆春・前警察庁長官は、暴力団との対決に積極的で、「山口組(弘道会)壊滅作戦」をぶち上げ、同時に市民に対しては暴力団排除条例を使い、暴力団との絶縁を求めた。
そこに行き過ぎはあったが、暴力団幹部との親密交際をひけらかす芸人は少なくなく、「反社会的勢力」を企業社会から締め出そうとしている警察が、「暴力団と芸能界」の長年の癒着にメスを入れようとするのも当然のことだった。
しかし、警察官もまたトップの顔色をうかがう官僚である。昨年10月1日、安藤氏が退任、それほど暴力団の締め付けに関心を持たない片桐裕新長官のもとでは、「芸能班」を立ち上げてまで大物摘発に意欲を燃やしていた警視庁組織犯罪対策第三課も急速にトーンダウンした。
その象徴が、大晦日の紅白歌合戦。紳助以上の親密交際をしてきた演歌界の大物が続々登場、自ら引退した紳助が気の毒に思えるほどだった。
そうした気運を利用しての大崎発言。「しょせん吉本は興行の会社」であることの証明だが、視聴率欲しさのテレビ局のモラルのなさを利用した、なし崩しの復帰を認めていいはずがないし、警察トップが代わったからといって、「芸能界と暴力団」に一定のケジメをつけるべきだという時代の要請に、変わりはないのである。

